雨降る日のキセキ

2度目

案の定、渡り廊下でのことが誰かに見られていたようで、教室に戻った時には知れ渡っていた。


ヒュウヒュウと冷やかされながら入る教室は、なんだか居心地が悪い。


けど、千隼くんは気にしてない様子だ。


「よかったなぁ?千隼。一回フラれて泣きついてきたあの日が懐かしいな」


翔吾がニヤニヤしながらイジってくる。


その横で夏菜は優しく微笑みかけてくれた。


「ね?案外上手くいくでしょ?」


「夏菜の言う通りだったね。ありがとう」


実際に千隼くんと話してみたら、過去のしがらみはあまり感じなかった。


きっと、突然いろんなことを話されて考えすぎていたんだと思う。


これからはもう大丈夫。


何があっても千隼くんと一緒にいるし、一緒に甲子園に行くんだ。


朝陽くんの夢舞台じゃなく、私たちの夢舞台に。


ただ、そんな私たちを刺すような視線で睨みつけてくる華と目が合った。


一気に現実に引き戻された気分だった。


まだ何も解決していないんだ。


赤坂くんのことも―。
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