雨降る日のキセキ

✡✡

「よぉ」


部活中、恐怖を感じさせる声は一つしかない。


「赤…坂くん…」


選手と真子ちゃんはランニングに行っていて、グラウンドには誰もいない。


用具の手入れや整理をするため、私一人だけが体育倉庫に残った。


まるで私が一人になるのを待っていたかのようなタイミングに、恐怖で身体が固まる。


「この前は邪魔されたけど、今日は邪魔させねぇ」


「…来ないで」


私に恐怖を味わわせるためか、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。


また、この前みたいなことされたら…。


「お願い…来ないでよ…っ」


ジリジリと倉庫の奥に追い詰められるにつれ、全身の力が抜けていきそうになる。


「そんなに俺が怖いなら部活辞めりゃいーじゃん。クラスも違うから会うことなくなるぜ?」
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