壱くん、お願いだから近づかないで。



「手、擦りむいてる。ばい菌入ったら大変だよ」

「……っ……」


 手慣れたようにティッシュを折りたたみ水で濡らすと擦り傷の周りにある砂を落とし、消毒液をかけると絆創膏を貼ってくれた。


「佑茉ちゃん、ごめんね」


 距離が近くて、顔が暑くなる。ありがとうって言いたいのに心臓もドキドキして、どうすればいいのかわからなくて目を合わせることができない。

 私が男の子にドキドキするなんて信じられない……


「座ろうか、可愛い洋服に泥がついちゃうよ」

「う、うん」

「この上に座って」


 彼はタオルを取り出しベンチに置いた。タオルを指差しているしここに座れってことだよね……いやいやいや、無理だよ!


「いいから、座って」

「う、ん」


 私はタオルの上にそっと座ると「お待たせ!」と言って角谷さんがやってきて、林田くんはビニール袋を二つ持っていた。



「男子がいると、荷物持ってくれるからいいよねぇ」

「あ、荷物持ち要員だったんだね」


 角谷さんはふふっと笑ってベンチに座るとビニール袋から可愛いお弁当を出した。
 それは写真映えしそうなもので食べるのが勿体無かったけど、完食しその後はスイーツを求めて私と角谷さんは歩き出した。


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