遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 亜由美につられたのか、彼も深々と頭を下げる。

「いいえ。そうですよね。知らない人に名前なんて教えたくないと思います。色々とすみませんでした」

 ぺこりと亜由美は頭をまた下げる。
 お互いに頭をぺこぺこと下げ合うような形になってしまって、一瞬目が合って苦笑する。

 亜由美は口を開いた。
「あの、私大丈夫です」
「大丈夫?」
「これ以上ご迷惑をお掛けするわけには……」

 特にお礼などは良かったと言っていたのだ。
 本当は名前も知られたくなかったのだろう。

 なのに、こんなことになってしまって鷹條は亜由美に名前を知られることになってしまった。

 もしかしたら、いや、もしかしなくても迷惑をかけているかもしれない。

 これ以上迷惑を掛ける前に帰ってもらおう。
 そう亜由美は思っていたのだ。

「分かった。じゃあご家族に連絡する」
「あ……」
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