遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「そ、そういう訳では……」
 むしろ、なぜこんなところに鷹條がいるのか知りたい。

「お前、なんなんだ? 杉原と俺は知り合いなんだ。関係ないだろう?」
「知り合いでも暴行は成立するぞ」
「暴行?」

 急にそんな言葉が出てきて、一条は眉を顰める。
「襟元を掴んだだけでも暴行罪は成立する。俺も証言する」

「僕も証言しますよ?」
 そう言ったのは、鷹條よりも背の高いがっしりとした男性だった。

 その男性はにこりと笑い、懐から身分証を出す。いわゆる警察手帳だ。

「こういう者なんですけどね? これを提示するってことは必要があると判断した時です。職務の執行の際は提示することになっています。つまりあなたを今、現行犯で逮捕しましょうかってことです」

「そんなことしてもいいと思ってるのか?」
「いいんですよ。彼女は嫌がっていて抵抗していましたし、腕を掴むのも暴行罪です。あなたはよく分かっていないようですけれど、ここで現行犯逮捕されれば、留置場に収容されて事件と身柄を検察庁に送致されます。当然その間は出社なんてできませんからね。勾留が決まれば、10日以上収監されます。規律正しい生活ができますよ」

 にこにことしているのだが、話の内容はとても怖い。
< 36 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop