遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「お前、何で俺のことばっかり目の敵にするわけ? それで気を引いているつもりかよ?」
気を引いている?何を言っているのだろうか。

「気なんか引いてませんけど」
「そうしてたら、お前って結構美人じゃん? 安心しろよ。そんな風に気ぃ引かなくたって付き合ってやるからさ」

 この男は一体何を言っているのだろうか?
 どうしていつも亜由美の言葉を分かってくれないんだろう?
 私、ちゃんと日本語を話しているわよね?

「あの、本当に止めて下さい」
「駅前のタワーでフレンチを奢ってやる。いいからついてこい」

 一条に強引にそんな風に言われたら、ふらふらとついて行く女子は多いのだろう。

 けれど、亜由美は到底そんな気持ちになれない。
 なぜ分かってくれないのだろうか。

「いいから来いよ」
 腕を掴まれて怖くて、亜由美は全身の毛がそそけ立つ。

「やだっ!」
「何してるんだ!」
 その声は聞き覚えのあるものだった。そして、亜由美を取り返してくれた力強い腕。

──また、助けてくれた。
「鷹條さん」
「全く、君は何でそう俺の前でトラブルを起こす?」
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