遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 鷹條も一瞬赤くなって、微妙な表情になる。
「あ、あー……そうだな。最近はSPにはあまり配慮はされないからな。捜査員なんかは捜査に支障が出るといけないからモザイクかけてくれたりするんだが」

「素敵でしたよ?」
「そんなの見なくていい」
 照れている鷹條は今までと違って、亜由美は嬉しくなってしまった。

 先ほどまでの沈んだ気持ちが徐々に晴れてくる。
「あいつ、いつもあんなにしつこいのか?」
「今日はすごくヘンでした。とっても強引だったわ」

「君のことが好きなんだろう」
「意地悪ばっかりします。それにちゃんとしてくれないし」
「好きな子に意地悪する男は多いぞ」

 亜由美はじっと鷹條を見た。
 鷹條は狼狽えたように目を伏せる。

「鷹條さんも意地悪するんですか?」
「しない。俺は……好きな子は大事にしたいからな」
 目を伏せていても鷹條はそんな風にキッパリと言う。

 亜由美はその鷹條の好きな子がとても羨ましくなってしまった。
「いいな。羨ましいです」

 鷹條に大事にされるのはとても、とても幸せなことだろう。
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