遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
「怖かったよな? こっちこそ、早く対応してあげられなくて、本当に申し訳なかった。今頃は営業部にも社内ルールは守ってもらうように通達出してもらってる。イレギュラーは課長を通すことにしたから、今後イレギュラーが発生したら僕に言ってくれる?」
「はい……」

 課長からは他にも亜由美のことを心配するような声も聞いたと言っていて、大丈夫だった?と優しく聞かれた。

 それには大丈夫ですと答える。
 迷惑に思ったんじゃないかと亜由美は思っていたけれど、課内のメンバーはそれだけではなく、心配もしてくれていたと知って、気持ちがとても楽になったのだった。



 午後からの仕事はスムーズに終わって、スーパーで買い物をし、家に帰るとそれを見計らったように携帯が鳴る。

 連絡先を交換した鷹條からだった。
 嬉しくて、胸がきゅんとする。
︎︎ 亜由美は緊張しながら、携帯を手に取った。

「はい」
『今、仕事中じゃない?』

「今日は定時に終わって、今、お家です」
『無事に帰ったか? 転倒したり、どこかで絡まれたりしなかったか?』

 どういう心配の仕方なんだか、と思うがすべて鷹條に助けられた時の状況だから、それには強く返せない亜由美でもある。
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