遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
恋人の鷹條の表情は意外と豊かで亜由美の鼓動は高鳴りっぱなしになりそうだった。

「杉原さん、ちょっといいかな?」
 会社に戻った亜由美は課長に呼ばれた。
 午前中の件だろうか、とドキドキする。

 そう言えば、伝票の件は営業部から正式に申し立てる、と一条は言っていたけれど。

「午前中の件を聞いてもいいかな?」
「はい」

 鷹條のおかげで落ち着いた気持ちになっていた亜由美は起こった出来事をありのままに課長に伝えた。

 課長は時折メモも取りながら、真剣に話を聞いてくれていた。

「なるほど……ね。まあ、だいたい他からヒアリングした内容とも変わらないかな」

「すみません」
「謝らなくていいよ。対応が間違っていたって訳ではないんだ。一条くんは……とても仕事が出来る社員なんだけど、少し問題も多くて、どうやって指導していくべきか、営業部の課長も悩みどころではあるらしいんだ。本人にしてみたら数字は出来ているのに昇進できないのはなぜかって、焦りもあるだろうが……それは杉原さんには関係ない社内の話」

 内緒だよ?と口元に人差し指を当てる課長は亜由美に笑って見せた。
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