遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 亜由美を抱き寄せて、鷹條はベッドに横になる。
 亜由美もそっと寄り添った。触れ合う肌がひどく温かかった。

「亜由美は甘えるのが下手くそだな」
「そう……かも」

「急に俺を頼れって言っても難しいかもしれないけど、俺もいるんだって理解はしておいてな。亜由美一人を守ることくらいはできるから」
「うん」

 頭を撫でられながら、肩や背中にもそっと手が動いて、撫でられる。グルーミングのようなそれはとても気持ちが良くて、安心できるものだった。

「俺が大事に思ってるって、忘れないで」
「うん」



 遅刻しそうになったあの日、ぶつかったのは怖い人だったけれど、それを助けてくれたのは運命の人だった。

 亜由美は少女漫画のような展開に憧れていた。
 鷹條は口は時々悪いし、愛想もないけれど、紛れもなく亜由美のヒーローなのだった。

しかも、現実でもSPという亜由美を充分に守ることの出来る力を持った人だ。

「千智さん、会えてよかった。大好きです。助けてくれて、ありがとう」
「大事にさせてくれるって言ったよな?」

嬉しそうな鷹條の顔に亜由美は逆らうことなんかできない。

──充分に少女漫画だったかもしれない。
笑う亜由美に鷹條はそっとキスしてくれたのだった。


     *⋆꒰ঌ┈┈END┈┈໒꒱⋆*

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