十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
コーヒーを一緒に飲みながら、どんな会話をしようか悩んでいた。
近くにあったパンフレットで、結婚指輪だけでなく色々とオーダーメイドできることはわかった。
作ってもらってもいい?これ。
私が選んだのは、ネックレスでもブレスレットでもなく、ピンキーリング。
左手の小指用。


「お待たせ」
「ありがとう……」

お客様が火傷をしないように、という配慮のためだろうか。
コーヒーは、しっかりとホルダーにセットされた紙コップに入っていた。

「砂糖なしの、ミルク1個で良かったか?」
「あ、うん……」

それは、かつて私が理玖の前でコーヒーを飲む時のルール。
今でも変わっていないけれど、10年前のことを当たり前のように覚えていてくれたことが、素直に嬉しかった。
私がミルクを入れて、マドラーでかき混ぜていると、いつの間にか理玖も私の前の席に座っていた。
手には、ミルク色のマグカップ。
10年前に理玖が愛用していたものだと、私も覚えていたことに気づいてしまった。
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