十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
この契約結婚の目的は、2つ。

まず1つ目の中野さんの事情というのが、不倫のカモフラージュ。
と言うのも、中野さんの本当の彼女である葉月さんは、実は人妻なのだ。
中野さん自身は、普通に結婚する気満々で、付き合って数ヶ月も経たない葉月さんにプロポーズしたらしいが。

葉月さんが結婚したのは、高校を卒業してすぐ。
妊娠をしたからという、できちゃった婚だったそうだ。
ところが、その結婚相手と言うのが最低最悪のダメンズで、DV、ギャンブルなど一通りのことはやり尽くしたそうだ。
葉月さんのお腹も、何かの理由で蹴ってしまい、その結果お腹の子は流産したとのこと。
それからしばらくは、旦那さんの言いなりになる、死んだような日々が続いたそうだ。
そんな日々が一変したきっかけが、中野さんとの出会い。
中野さんの営業先に、パートとして葉月さんが働いていたらしい。
そこで中野さんが葉月さんに一目惚れ。
渾身のアプローチによって、葉月さんも心を動かされたらしいが、なかなか旦那さんの事を言えずにいたらしい。
そんな中で、旦那さんの方が、葉月さんと中野さんの関係に勘づいてしまったらしい。
葉月さんは否定し続け、旦那さんは葉月さんを徹底的に暴力で追い詰めた。
その結果、葉月さんは入院しなくてはならない程の大怪我をおったのだ。

せめて、旦那さんと葉月さんが離婚をするまでの間、中野さんと葉月さんの関係を疑われなくする方法はないか模索していたところに、2つ目の事情……つまり、私が結婚しなくてはいけない事情が、中野さんの前にやってきた。
これが、この契約結婚のきっかけとなったのだ。

そして、2つ目の私の事情と言うのは……父親の余命宣告だった。
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