十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
「それで?」
「え?」
「探しに来たんだろ?アクセ」

理玖は、10年前の私を知っている。

「自分用?それともプレゼント用か?」

私が、アクセサリーとアクセサリーを作る彼に強く恋焦がれていたことを。

「それは…………」

かつての私は、この人から永遠の愛の証を貰うことを夢見ていた。
この人の手から生み出される、美しい指輪を。
そしてこの人も、それを知っている。
そんな人に、私は言わなくてはいけないのだろうか?

他の男性との絆の証を買いにきました、と。
そこにあるのは、愛情などではないけれども。

「どうした?美空」

10年というブランクを感じさせない呼び方に、針が数本突き刺さったような痛みを心に感じた。

「ここ、如月のお店だったんだ……」

私は……理玖と、以前のように呼ぶことを躊躇うというのに。

「……ああ……」
「夢、叶えたんだ。すごいね」
「それより美空、お前……」

その時だった。

「美空ちゃん?」

背後から、中野さんが現れたのは。
その瞬間、理玖の表情がすぐに変わったのが分かった。
この表情は知っている。
私が、別れを告げた時と、同じ顔。
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