俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~





「大丈夫、赤ちゃん動いてまーす。軽い貧血だったのかもね」


産婦人科の先生が超音波器具をお腹に当てて、エコー画面をさした。


「点数はとらないからね。あ、勝手に薬とか出せないから、かかりつけのクリニックに早めに受診してね」

「あ、ありがとうございます」


大学病院(職場)で倒れたということもあり、特別に診て貰えたのだ。
とりあえずエコーで無事を確認できて、ほっと胸を撫で下ろす。




「坂井先生、ありがとうございます。珠里さんと子供が無事で本当に良かったです」

「ちょ、ちょっと春多くん……恥ずかしいから自分で拭くから」

「なんで?全部見てるのに今さらじゃん」

「はい、そこ。イチャつかないで」


外面用の爽やかな笑顔をした春多くんが、私のお腹のジェルを優しく丁寧に拭いてくれるけど。くすぐったいし、下腹部の下の下の方まで触られるから気が気じゃない。

しかも、見たって1回だけでしょ!



「車椅子にする?歩く?俺の肩につかまっていいよ」

「ねぇ、ここ職場だからやめてよ」


産婦人科病棟の廊下で、今にもキスしそうな位に距離が近くて慌てて引き離した。
ここは私の仕事場だけじゃなくて、あなたの実習先でもあるでしょう?



「珠里さんだって、自分の病棟で大泣きながら好き好き大好きって抱きついてきたじゃん」

「……っ、」


< 62 / 164 >

この作品をシェア

pagetop