俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
振り向かなくても誰だか分かる。
ここは外来なんだから、彼と鉢合わせする可能性が十分にあることは分かってたのに。
「妻には疑われてたんだが、まさかああいう形でバラされるとは思わなかったよ」
そうだ、俊也さんはSNSに匂わせ不倫を投稿されたんだ。
背中合わせだから、お互いどんな表情をしているか見えないけど、声のトーンから疲れきっていることが伝わってくる。
「調べられていた事は薄々気が付いていたけど。もしかして君も知っていたのかい?妻がバラす事を」
「いえっ、私は知らな……」
「結局、君も他に男がいたんじゃないか」
「……」
「ははっ、まさか院長のご子息にあっさり乗り換えるとはね。本当に驚いたよ。君も大層なご身分だね」
冷たい声に体が凍り付いて、俊也さんが去った後もその場を動けなかった。
優しい笑顔も、包み込んでくれた腕も、甘い声も全部。私と彼が過ごしてきた時間が否定された気がした。
「あれ、春多の彼女さん?固まってどうしたの?」
ハッと顔を上げると、どこかで見たことあるような男の子が前に立っていた。