つけない嘘
彼の腕がゆっくりと私の肩に伸び、優しくその胸に抱きしめられる。

そして、亮は私の耳、目、頬、に触れるように唇を当てていく。

「好きだよ」

何度もそう言いながら、最後に私の唇に彼の唇が触れた。この間よりも少しだけ長く留まった唇は一層切なく私の中心を熱くした。

思わずぎゅっと彼の背中を抱きしめる。

「もっと……」

自分でも驚くような言葉が口からついて出た。

こんなこと、充にだって言ったことはない。

いてもたってもいられないもどかしい気持ちになり、彼の頬を両手で挟むと自分からキスをした。

亮もそんな私に答えるかのように、深く私の唇に押し入る。

互いにむさぼり合うようなキスは息をするのも忘れるほど続き、意識が遠退きそうになった時ようやく唇が離れた。

亮は意を決したかのように強い眼光で私を見つめると、座席のシートを倒し私に覆いかぶさる。

彼は何も言わず、ただ私を求め続けた。

亮の目も唇も、官能的に私の体をなぞる手も指も、汗ばんだ額も荒々しい息づかいも、全てが愛しい。

この時間がずっと続けばいいと思った。

激しく揺さぶられながら、遠くで私のスマホのバイブが鳴り続けている音に気付く。

その音を頭の中でシャットダウンすると、彼の背中に強くしがみついた。

「私も亮だけだよ」

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