つけない嘘
温かかった。彼のそばにいるといつも笑っていられて、体中がぽかぽかした。

夜の高速はほとんど車がなく、暗闇に点々とオレンジのライトが道しるべのように浮かび上がっては流れていく。

「仕事終わり、東条を呼び出してきちんと話つけてきた。その時、実は……って、俺たちの写真をお前の旦那にも送り付けたって話聞いてさ。大丈夫だったのか?」

「……まぁ」

「本当に?」

「……」

「さっきまで泣いてただろ?目が真っ赤だ」

亮は静かに続ける。

「瑞希さん......今本当に幸せなの?」

何も言えず、ただうつむくしかなかった。

口に出して幸せを否定してしまったら、充だけを悪者にしてしまうみたいで辛かった。

「幸せじゃないなら、俺はもう遠慮しないから」


高速を降りた先に海岸線が続き、暗い海の向こうには漁火がいくつも揺れていた。

漁火の見える道路の脇に車はゆっくりと停まる。

私たちの他に誰もいない。

寄せては引いていく波の音だけが車内にせつなく響いていた。

彼は私の方に体を向けると、正面から私を見つめ言った。

「俺には瑞希さん以外に誰も考えられない」

その真っすぐな瞳に耐え切れなくなり、視線を逸らす。

「待っててっていうなら十年でも二十年でもそれ以上でも待つ」

「二十年後だったらもうすっかりおばちゃんだけど」

「構わないさ。おばちゃんだっておばあちゃんだって瑞希さんには変わりない」

「変なの」

「いいよ、変でも」

彼のはにかむ笑顔を見つめながら、もう自分を許してあげようと思う。

亮が好きだと今はっきり確信に変わった。
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