あたしは桜子- 売れないモデル-
「それがさ、あいつの家すんごい豪邸でさ、あたしはゲストルームに泊まったの。」


「ふーん。」


智也は、興味なさそうに言う。


「それよりさ、橘琴美はどうだった?綺麗だったか?サインもらった?」


「んなわけないでしょ。あたし達衣装つけて、スタジオでスタンバイしてて、ずーっと待たされて、橘琴美がきたらアイスクリームおいしいってそれだけで帰ったのよ。」


「ふーん、それだけで一日中かかるんだ。CMなんて、すぐ出来るのかと思った。」


「もう、智也にはわからないの。」

智也は、何か言いたそうにしていた。
桜子が座ると、智也が口を開いた。

「俺さ、お前に話があるんだけど…。」


「なーに?話って。」


「俺、実家へ帰ったらさ、おやじがお前来年卒業だから、帰って来いって…。おやじの事務所で働きながら、司法試験の勉強しろって言うんだ。」


「えー、それ何?ねえ、どういう事?」


「はっきり言うよ。俺、お前に一緒に来て欲しいんだ。」


桜子は、唐突に言われて返事が出来なかった。


「今、お前がチャンスだって事もわかってる。でも、この先売れるかどうかもわからないだろ?良く考えて、すぐじゃないし。」


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