When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
「ちゃんと別れ話をした方がいいのかな……でも奥さんにあそこまで言われたのに、私はもう連絡したくない……」
「恵那は何もしなくていい。とりあえずブロックだけしておけ」
「わかった……」

 泰生は恵那のマンションの前に車を停めると、シートベルトを外そうとしている恵那の手を握った。落ち込んでいた恵那は、それだけで元気をもらえた。

 そんなことをされたら離れ難くなっちゃうじゃない……胸が苦しくなって、体は泰生のそばにいたいと疼く。

「恵那、今度お互いの親に挨拶に行こう」
「……早くない?」
「早くない。それに家が目の前だから一日で済むぞ」

 少し戸惑ったものの、泰生が真剣に考えてくれていることが嬉しかった。

「わかった。親に聞いてみる」

 恵那が頷くと、泰生は彼女に覆いかぶさるようにしながらキスをした。

「……やっと気持ちが繋がったんだ。もっと恵那のそばにいたいのにな……」
「うん……そうだね……」

 なんか学生の恋愛みたいで恥ずかしい。でも繋がるはずがないと思っていた気持ちが、ようやく一本の糸になったんだもの。

 その時だった。突然車の窓ガラスを叩く音がする。振り返ると、そこには恵那が不倫していた男が、怒りの形相で立っていたのだ。「三田さん⁈」

 驚いたように目を見張る恵那の頭を泰生は優しく撫でる。

「恵那はここにいろ」

 そう言い残すと、泰生は車から降りてロックをした。ここはまばらだが人通りもある。だがその方が安全であることも確かだった。

 三田は泰生を睨みつけてから、恵那の方へ視線を戻す。恵那はわざと顔を逸らした。

「連絡が取れないと思っていたら、もう新しい男を見つけたのか?」
「恵那とは子供の頃からの付き合いだから、たぶんあんたよりはよく知ってるよ。それに恵那を傷付けるような男を近寄らせるつもりはないんだ。帰ってくれないか?」

 すると男は車のボンネットを叩きつける。恵那の体がビクッと震えるのを見てニヤッと笑った。

「お前だって同罪じゃないか。二股かけてたんだろ? いいよなぁ、こんな外車を乗り回すボンボン。俺はこいつにフラれた時の代わりだったんだな。お生憎様、俺もお前を捨ててやるけどな」

 なんて男だ。性根が腐ってるーー泰生は呆れた。恵那はなんでこんな男と付き合ってたんだろうか。まぁ恵那の前では猫かぶってたんだろうが。
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