When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
 泰生はため息をつくと、ポケットかスマホを取り出した。画面を見ながら、何やら数字を読み上げると、途端に三田の顔が青ざめていく。

「お前……どうしてその番号……」
「どうしてだろうな。お前の奥さんが頼んだ探偵に、お前と恵那の調査を頼んでる……って言ったらどう思う? そしてその報告書を奥さんに渡す約束を交わしてると言ったら……それが何を意味するか、お前ならわかるよな?」
「お前……妻と話したのか……?」
「俺ではなく代理人だが。あんな修羅場になったのに、お前を一人にして妻が長時間不在にするなんておかしいとは思わなかったか? まぁだからこそ、あんなにたくさん着信やメッセージを残せたんだろがな」

 三田は悔しそうに下を向く。

 会話を全て聞いていた恵那は、ロックを外すと外に飛び出した。そして三田の前に立つと、思い切り平手打ちをする。

「ふざけないでよ。私は独身だと思ったから付き合っただけ。なんで既婚の男なんかと付き合わなきゃいけないわけ? 時間の無駄。腹立たしいわ」

 そうしてもう一発頬を叩く。

「私は彼が好き。あの人が私以外の人を抱いたらって考えるだけでおかしくなりそうよ。あんたの奥さんだってきっとそう思っているに違いないわ」

 言い終える前にもう一発お見舞いする。

「女を馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ。こっちにだって選ぶ権利があるの。自分が良い男だとでも思ってる? 不倫をする時点でクソ男決定よ! 地獄に落ちろ!」

 そして最後にもう一発、力いっぱい平手打ちをする。

「やられた分、ちゃんとやり返した!」

 そこまで言い終えた恵那は、スッキリしたような表情になると、気持ちよさそうに額の汗を拭った。
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