When pigs fly〜冷徹幼馴染からの愛情なんて有り得ないのに〜
 三田は唖然とした顔で恵那を見ていたが、徐々に怒りが込み上げてくるのが見てとれる。拳に力を入れたのを見て、泰生は慌てて恵那の方へ飛び出す。

「恵那!」
「ふざけんな!」

 同時に言葉が聞こえ、恵那は思わず目を閉じた。その瞬間、泰生の腕に包まれたのがわかった。

「足立先生、大丈夫ですか⁈」
「はい、大丈夫です」
「おいっ、押さえつけろ!」
「なんだよ! 何もしてないだろ⁈」
「何言ってんだ! お前の拳がしっかり足立先生の腕に入っていただろう!」

 やけに騒がしくなり目を開けると、三人の警察官が三田を背後から地面に押しつけていた。驚いたように目を見開いた恵那は、泰生の方へ向き直る。

「大丈夫⁈」
「ん? あぁ、大丈夫だ。筋肉は一番手近な防御だからな」
「良かった……」
「それにしても、ボロクソに言ってやったな」
「……スッキリしたけど、結果がこれなら反省しないと……」
「俺も恵那を怒らせないようにしないとな」

 そう言いながら、泰生は恵那を力いっぱい抱きしめる。

「恵那が無事で良かった……」
「うん……ありがとう……」

 そこへ警察官が二人の元へやって来る。

「足立先生、今朝は連絡をくださってありがとうございました。あの、お話を聞きたいのですが、お時間よろしいですか?」
「はい、大丈夫です」

 警察官が離れるのを確認して、恵那は怪訝な顔で泰生を見た。

「今朝の連絡って何? そういえば三田さんとの会話でも気になるワードがたくさん出てきたよね」
「……まあ、それは追々話すよ。今は……そうだな、新居を探そう。二人で住むための家。どうかな?」
「腑に落ちない点はたくさんあるけど……最高の提案だと思うから許す」
「よし、じゃあ警察の後に不動産屋に行こう」
「なんだか全体的に早いんだけど」
「いいんだ。もう時間を無駄にはしたくないから。一分一秒でも長く恵那と一緒にいたいんだよ」

 恵那は顔を真っ赤にして、頬を両手で押さえる。冷徹な男だって思っていたのに、こんなに甘い一面をどこに隠してたのよ。免疫のない私は、この激甘な泰生に耐えられるのかしら。

 時折見せる笑顔に夢中になっているのは私の方だわ。
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