白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
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 発走三十分前。前検量を終えた俺は装鞍所で鉛、帽色、番号ゼッケンとともに装具をつけ、下見所へ向かう。
 午前十一時。第一レース発走の合図が轟く。次のレースを控えている俺は騎手服の確認を経て最初の相棒と顔をあわせる。騎乗命令と同時に跨がり、引き締まった空気を共有する。7番、オキノリョクチ。腹回りをきゅぅと締めて俺の指示に従って歩き出す。新馬ゆえレース経験は浅いがとても素直な馬だ。

 パドックにて常歩行進、返し馬。発走十五分前までぐるぐる他の馬たちとともにウォーミングアップ。周回する姿をラジオ実況や競馬雑誌の記者とともに観客も興味深そうに見つめている。あの観客のなかにフーカもいるのだろう。彼女が馬券を購入しているとは思えないが、本日のレースを最後までここで見守っていると言ってくれた。レースで勝っても負けても構わないから、思いっきり走ってきてと言ってくれた彼女。できれば重賞レースでの勝ち星を彼女に捧げたい。そしてその勢いで今度こそ告げるのだ――結婚しよう、と。
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