弁護士は逃げる婚約者を離したくない
後は返事を聞くだけである。

まあ、聞かなくてもわかっているけれど。

「ーーわからへんね」

宇大が言った。

「ですから、つきあっている人がいるなら婚約破棄をしましょうって言っているんですよ。

2人で話しあって決めたことにすればいいですし、私もちゃんと口裏をあわせますし…ああ、もしかして私の心配をしているんですか?

また新しい出会いを見つけて、素敵な人と…」

「何でそんなんを言うんや?」

「…はい?」

宇大は私の顔をじっと見ると、
「破棄される理由がわからへんねん」
と、言った。

「僕が好かんかったらともかく、そないな理由で破棄される理由がわからへん」

「理由も何も、私は南川さんと彼女さんのためを思って…」

あれ、何か変な方向へと向かっていないか?
< 14 / 82 >

この作品をシェア

pagetop