紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「何だい、灯ちゃんはうちの回し者みたいになってるねぇ。はい、唐揚げ定食お待ちどうさん!」
おばちゃんが愉快そうにそう言いながら私の唐揚げ定食を運んできてくれた。
「え、おばちゃん知らなかったの?私かなり前からここの回し者だよ?」
「あっはっはっ!そりゃあ知らなかったよ!」
ニヤッと笑ってそう言えば、おばちゃんが豪快に笑う。
「僕は、そんな回し者の彼女おススメの天ぷら定食をお願いします」
「お、さすが回し者、鼻が効くねぇ。今日の海老はいいのが入ってるんだよ」
「(2人とも回し者って単語、めっちゃ気に入ってるじゃん……)」
茶目っ気たっぷりに笑ったイケオジに同じく茶目っ気たっぷりにそう返したおばちゃんは、厨房のおじちゃんに向かって「天ぷら定一丁ー!」と元気よく注文を入れた。
……唐揚げ定食も来ちゃったし、12時からの30分限定クエストは今日はもう諦めよう……。
美味しいご飯は美味しいうちに。それが私のモットーだ。それに食べながらスマホを弄るのは私の流儀に反する。だって、それは料理にも作った人にも失礼だから。
「あ、そうだおばちゃん、取り皿1枚もらえるかな?」
「はいよー」
そう切り替え握っていたスマホをテーブルの上に置いた私は、おばちゃんがくれた取り皿に唐揚げを2つ取り分けて、目の前の彼に差し出した。