紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「良かったら、お裾分けです。揚げたてが1番美味しいんですよ」

「……くれるの?」


きょとん、と私を見つめ返すイケオジ。


「あ、唐突にすみません。迷ってたのでせっかくならぜひにと思って。よく知りもしない小娘からのお裾分け、嫌じゃなかったらなんですけど」

「はは、嫌な訳ない。ありがとう、嬉しい。それじゃあお言葉に甘えて、頂いてもいいかな?」

「はい。おばちゃんがおまけしてくれたので、そのおまけ分です。だから遠慮なくどうぞ」


私のセリフに、彼は本当に嬉しそうにふわりと微笑んだ。

そしていただきます、と手を合わせてから綺麗な所作で唐揚げを持ち上げ、そのままパクリといく……、かと思いきや、彼は何とそれにふうふうと息を吹きかけて冷まし始め……。

紳士然りとした佇まいなのに子供みたいなその姿に、私は完全に意表を突かれた。


「……ひょっとして、猫舌、ですか?」

「うん、恥ずかしながらね。本当はどんな料理もアツアツのままいただいた方が美味しいって言うのはわかってるんだけど」


彼は照れ臭そうに箸を持っていない方の手で襟足をくしゃりと掻く。

……イケオジが猫舌……。

ギャップ。

このふーふーしている姿も照れている姿も、まさにギャップだ。

それもなかなか破壊力のある……。
< 13 / 279 >

この作品をシェア

pagetop