紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
虚をつかれつつも、とりあえず珠理ちゃんが手にしていた布面積の極端に少ない下着をパッと奪い取り急いで戻して、チラチラ感じる視線にペコペコしながら慌ててお店を出る。
そしてちょうど空いていたエスカレーターの近くにある、座り心地はあまり良くなさそうなベンチに珠理ちゃんを誘導した。
並んで座ってみるも、チラッと珠理ちゃんの方を見やれば、珍しくムスッと口を真一文字に結んで言葉を紡ぐ気配はない。
先程までは全く気にもとめていなかった店員さんの接客する声だとか、行き交う人たちの会話だとか、建物内の喧騒を途端に耳が拾い出す。
「じゅ、珠理ちゃん?」
「ーー灯さんは美人な元カノに出会って、イケオジは自分のどこが良かったんだろうって、余計に自信がなくなっちゃったんですよね?」
いつもと様子の違う珠理ちゃんに居た堪れずそう呼び掛ければ、彼女は静かに口を開いた。眉根を寄せたままの、難しい顔をこちらへ向けて。
「ーー灯さんは私のこと、見た目で判断しなかったじゃないですか。ちゃんと中身を見てくれてた。なのに灯さんは自分のこと、見た目で判断してるところ、ありませんか?」
「…………っ!」
それは、何の受け身も取れていなかった私を動揺させるには十分だった。
珠理ちゃんの私を真っ直ぐに見据える瞳に、驚きで目を見開いた、何とも滑稽な私が映っている。
「こんな"地味な"私の、どこが良かったんだろうって、思ってますよね?」
「………………。」
……全部、図星だった。
図星過ぎて返す言葉もない。
ーー珠理ちゃんの、言う通りだ。