紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「しっかし、昨日急に珠理から"明日は私じゃなく会社の先輩のヘアカットをお願いしたいのっ!"ってすごい勢いで連絡が来た時はびっくりしたわ」

「へへ、ごめーん」


メガネのない状態では隣の珠理ちゃんの表情は鏡越しにぼんやりとしか見えないけれど、彼女がペロっと舌を出したような気配がした。


「その行動力、さすが麻美の妹だよなー」

「え、坂崎さんそれ褒めてます?」

「おお、そのつもり」


くく、と笑いながら珠理ちゃんの髪をカットしているのは、このお店のオーナー兼店長の坂崎さん。

麻美さんと同い年で、有名なモデルや女優のヘアメイクを担当してたり、テレビの密着取材を受けたこともあるくらい有名な人なんだそうだ。

切長の瞳が整った容姿と相まって一見彼を冷たそうに見せるけれど、実際話してみると優しくてざっくばらんなお兄さんだった。ちなみに溺愛している年下の彼女もいるらしい。


「さっ、2人とも、たくさん買い物して来て疲れたでしょ!しばらく貸切状態だし、良かったらコレ飲んで食べて、寛いでってね!」


そう言ってにこにこと私の前にアイスティー、珠理ちゃんの前にオレンジジュースを置いてくれたのは、先程飲み物のリクエストを受け付けてくれたこのお店のアシスタントである悟さん。

今日のお菓子は特別仕様!と、いろんな種類の個包装のお菓子がてんこ盛りに乗った、涼しげなクリアブルーの小皿も一緒に添えてくれた。

その中にはうちから発売しているお菓子も混ざっている。

坂崎さんや麻美さんよりも年下に見える彼は、笑顔がとても人懐っこい。


C’est la vie(セラヴィ)』はこの3人からなるお店で、珠理ちゃんは2ヶ月に1回ここに通っているらしい。
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