紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

「最近ようやく仕事が落ち着いてきて、毎週水曜日ならここへランチに来られそうなんだ。だからあかりちゃんさえ良ければ、またこうやって僕のランチに付き合ってもらえないかな?」

「え?」


予想外のお願いに、私は目を瞬かせる。


「ダメ、かな?」


私のリアクションに少し不安げに瞳を揺らすその様子が、しゅん、と項垂れるゴールデンレトリバーみたいで、私は慌てて言葉を発した。


「いや!私は後輩に他の所に強制連行されない限りはほぼ毎日ここに通ってますから、それは全然お安い御用です!でもこう言っちゃ何ですけど、せっかくのランチの時間に私と食卓を囲んでも何の面白味もないと思いますよ?」

「はは、どうして?僕はこの前のランチ、すごく楽しかったのに」


……どの辺が、楽しかったのだろう。

この前だって彼がごく自然に話題を提供してくれたから会話が成り立っていたようなもので、私からは特に彼を楽しませるような話題を提供した記憶はない。

それに美人とか可愛い子ならまだしも、こんな地味な女を目の前に置いて食事なんてしたって、目の保養にすらならないだろうに。

解せぬ。

なんて、にこにこと眦を下げてそう言った彼を見つめる私の顔が、心の声をそのまま物語っていたのだろう。


「そんなに難しく考えないで。あかりちゃんの気が向いた時にここで一緒にランチが出来るだけで僕は嬉しいんだけど、どうかな?」
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