紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】


「もう一度、会いたい人がいる。でもランチの時間にあそこに行く以外、会う手段がない」

「……いきなり何を言い出したかと思えば……」

「だから、行きたい」


仕事以外ではいつものらりくらりしている僕の珍しく強い意志の滲んだその声に、朋くんが盛大なため息を漏らした。


「珍しいですね。人にほとんど執着せず、それ故毎回すぐ彼女にフラれてしまうようなあなたに、追いかけたくなる女性(ひと)が出来たとは」


……会いたい人が女性だと、朋くんにはお見通しらしい。

それにしても……。


「……人聞きが悪いなぁ」

「だってその通りでしょう?"私のこと、そんなに好きじゃないでしょ?"ってフラれるのが昔からあなたのお決まりのパターンなんですから」

「……僕なりに、ちゃんと好きだったし大切にしてたつもりだよ?」

「まぁそうなんでしょうね。でもあなたの"好き"はせいぜい、"カレー?ああ、好きだよ"くらいの感覚なんです。私や(こう)に対するそれと何ら変わらない。熱量が違うんですよ、熱量が。だって、他の男に触れられたくないとか取られたくないとか、お付き合いしていた女性に対して今まで一度でもそういう執着心や独占欲を、持ったことがありますか?」

「……あー……」

「だからフラれるんですよ」


皇というのはカジュアルフレンチレストランのオーナー兼シェフをしている僕たちの友人で、同じく高校の同級生だ。


一応異議を唱えてみたが、さすが皇と共に長年僕の友人でいてくれる彼は、痛いところを突いてくる。
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