紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
確かに僕は、これまで一度も女性に対してそんな感情を抱いたことはない。
交際の始まるきっかけも、いつも相手の方からだった。
それ故彼の言う通り、"私のこと、そんなに好きじゃないでしょう?"とフラれたのは一度や二度じゃないのだが、そこでそれをわざわざ否定してまで引き止めようと思ったことがない時点で、やはりそれほど……、ということだったのだろう。
「朋くんはそういう気持ち、抱いたことある?」
「……お忘れですか、副社長。僕の、妻に対する執着心と独占欲を」
完全にプライベートな会話をしているにも関わらず、頑なに僕を副社長呼びする朋くんを見ながら、そういえばそうだったと苦笑が漏れた。
朋くんは、僕たち3人の中で唯一の既婚者だ。
その奥さんである早苗さんは彼の高校時代のバイト先の先輩で、彼女の人柄に惚れた朋くんからの猛アプローチの末お付き合いが始まり、彼の大学卒業を経て割と早い段階で結婚まで至ったのだが。
実はそのお付き合いに至るまで、朋くんはこの早苗さんに何度もフラれている。
朋くんという男は、眉目秀麗、頭脳明晰、冷静沈着。昔からそういう男でとにかく女子からよくモテていた。
だからこそ早苗さんは『……私なんかじゃ瀬戸くんには釣り合わないから』と、彼の告白をずっと流し続けていた。
それでもこの人しかいないと、彼女以外好きにはなれないと、朋くんが諦めずに気持ちを伝え続けた結果、ついに早苗さんが落ちたのだ。