紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
ワイドショーのリポーターさながらに拳をマイクのように突き出したのは、クラスのムードメーカーでお調子者の田原くん。
"……あり得ないから"
もはや石のように固まったまま耳を塞ぐこともその場から逃げ出すこともできなかった私の身体を、樹くんのその言葉が容赦なく貫いた。
さらに追い打ちをかけるような、「えー、樹くんひどーい!キャハハ……」と明らかに優越感に浸っているようなみゆきちゃんのその笑い声に、私はようやくその場から弾かれたように逃げ出したのだった。
後から知ったことだけど、実はみゆきちゃんも樹くんのことが好きで、ライバルの1人である私を蹴落とすために私の気持ちを吹聴して回っていたらしい。
初恋も、友達も失った中2の夏。
幼いながらに他人に自分の心の内を曝け出すことのリスクを知った私は、それ以来自分を守るバリアーを張って人とは適度に距離を置くようになり、恋とも無縁の生活を送ってきたーー。
「……灯さんは、私が灯さんを慕うようになったきっかけ、知ってますか?」
テーブルに突っ伏して久しぶりにそんな遠い昔の苦い記憶を思い出していた私を、珠理ちゃんの声が現実に引き戻した。
「……え?」
顔を上げてオーバルのメガネをクイ、と押し上げれば、思いの外真剣な表情をした珠理ちゃんと目が合う。
珠理ちゃんは、そんな私のバリアーを物ともせずいつもガンガン攻め込んでくる唯一の子。
そのきっかけ……?
彼女は私の目をしっかり見据えたまま、ゆっくりと話し出した。