紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】
「私入社してすぐの頃、お姉様方に給湯室で陰口叩かれてたことがあって。面と向かってる時は全然そんな素振りなかったのに、"仕事もろくにできないくせに見た目ばっかり着飾っちゃって"とか、"男に媚び売って"、とか、"ぶりっ子"とか。私こういう見た目なんで昔からそういう陰口は結構叩かれて来たクチで、慣れてはいたんですけど。でも、傷つかない訳じゃないんですよね。で、コーヒー飲みたいけど入るに入れずにいた私に、いつからそこにいたのか、灯さんが言ってくれたんです」
「私?」
「………」
佐原くんは、静かにビールを飲みながら珠理ちゃんの話に耳を傾けている。
「"仕事が出来ないのはまだ入社して間もないんだから当たり前。一生懸命覚えようとしてるのも、中村さんがにこにこしてるのは男の前でだけじゃないっていうのもちゃんと分かってる。あんなの、ただのやっかみだから気にすることない"って、それはもう淡々と」
「そ、そんなことあったっけ……」
あったような、なかったような。残念ながら、私の記憶にはあまり残っていない。
「もう!あったんです!それで灯さん、持ってたカフェオレ缶くれて。ああ、この人は私をちゃんと見てくれてたんだなぁって、何か救われたっていうか、嬉しくて。それからです、私が灯さんに纏わりつくようになったのは」