iDOLの恋人~好きになった人は超有名人でした~
その子との会話によるとどうやら木の奥で猫の声がしたので行ってみると段ボールの箱に捨てられた金色の猫がミャーミャー鳴いていたらしい。

「猫がかわいそうで帰れない。」

「どこから来たの?」

「僕はその丘の上にある宿舎に1ヶ月ほど滞在してる。けれど猫は連れて帰れない。」

丘の上の宿舎…?
少し疑問に思いつつわたしはベンチを指し示し、2人して腰を下ろした。
わたしたちはベンチに座るとお互いのスマホを覗き込みながら会話を続ける。

猫か…
男の子の手のひらの上でもそもそ動くその金色の物体はめちゃくちゃ可愛かった。
こんな子がこのまま保健所行きなんて…耐えられそうにない。
うん。問題ない。家族は反対しないだろう。

決めた!

「わたしが連れて帰って飼うよ。」

そう言うと男の子はパッと顔を上げて嬉しそうにわたしを見て、そして嬉しそうに破顔した。

そしてその葉っぱまみれの頭をあらためて見たわたしは思わず吹き出してしまった。

「ぷっ…。頭…ひどいよ。」

くすくす笑いながら、翻訳機能を使わずにゼスチャーで示してみる。

「えっ?!うわっ…」

焦りながら片手で葉っぱを取ろうとするので、わたしは男の子の頭に手を伸ばしあらかたの葉っぱをとってあげる。

サラサラの髪…
結構鮮やかな茶色に染めてる…あ…ピアスしてるんだ…。
それに色白くってめちゃくちゃきめ細やかな肌してるし…よくみるとイケメンだ…。

葉っぱ取りながら男の子じゃなくてもしかしたらわたしと同じくらいの歳なのかもって…思った。

「終わったよ。」

日本語で言ってベンチの横にもう一回座った。

「ありがとう。」

その子は日本語で言うと少し顔を赤くして猫を撫でた。

しばしの無言…
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