競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

課長は実は創業者一族の出身だ。だから情報の信憑性は高い。

(次の仕事見つけなきゃ。でも、私にできる事なんて……)

大学の就活でも100社近く受けては落ちての繰り返しで、心身ともに削られた時にようやく採用してもらえたのが今の会社。ぱっとしたスキルも資格もない私が唯一働けた場所。

(どうしよう……)

とりあえず駅に置いてあった無料の求人誌をカバンに入れて、覚束ない足取りで帰宅する。
築30年は過ぎたアパートの2階に登ると、うめき声が聞こえた。
階段の真正面……私の家から。

今日は、お父さんも短いお盆休みで家にいたはず……まさか!?

急いでドアの前に立つと、かばんから家カギを出そうとした。けど、手が震えて上手くカギがとり出せない。

「うっ…」
「お父さん!待ってて、今行くから!」

何度もカギを落として、ようやく鍵穴にカギを入れて回す。古いカギだから何度もガチャガチャ回して、ようやく開いた瞬間勢いよく玄関へ飛び込んだ。

そして、玄関で苦しそうにうずくまるお父さんを見つけた。

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