競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。
「さくらちゃん!ごめん遅くなって」
さくらくんは美女を振り切ってきたけど、私にはそれが“別れを告げるのが遅くなってごめん”という意味に取れた。
「さくらくんあのひとは……なに?」
「あ、あのひとは…馬主の娘さんだよ、ほら、アケボノソウの」
「指輪、プレゼントするくらいなのに?」
「え……」
私が疑惑のつぶやきを表示してスマホの画面をさくらくんに見せると、気まずそうな顔になった上に頬をポリポリと掻いた。照れ隠しの癖…。
「あ〜それは……うん、必要あるから下見にね。ほら、お、オレ言ったろ…さくらちゃんとの先はちゃんと考えてるって」
「……私と、別れたいってことね」
「え?」
さくらくんは驚いたように目を瞬いていたけど、演技が上手だよね。もう、何もかも信じられない。
「この日、私と待ちあわせしてたのにこのひととは会ったんでしょ!」
そう。約束をすっぽかされた日、さくらくんは宝石屋に行ってた。美女と一緒に…そんな人をどうして信じられるだろう?
「そうよ?翔馬とわたしはその日あつ~い夜を過ごせたわ。この指輪だって彼からの…」
「嘘を言うな!さくらちゃん、聞いて!!」
美女が見せつけるように指輪を示し、さくらくんに腕を絡める。
「もう、信じられない……!さくらくんのバカ!!勝手に誰とでも結婚しちゃえ!!」
「さくらちゃん!」
耐えきれなくなった私は、そのままその場から離れ走った。
さくらくんから山のようにライムや電話が来たけど、もう聞きたくなくてすべて拒否した。