競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。

「落馬です!アケボノソウ落馬しました!アクアスターゴール!新潟2歳ステークスを制しました!」

「さくらくん!アケボノソウ!」

思わずテレビに駆け寄ると、後ろから「邪魔だ!見えねえよ」と文句が出る。

「さくらっち、こっち来て」

由良先輩が私の手を掴んで引いてくれたけど、ガタガタと体が震えて止まらない。

さくらくん……一瞬だけ映ったけど動かなかった。落馬がどれほど危険か知ってる。乗馬でさえ命の危険があるのに、あんなスピードで走ってる最中に…なんて。
それに、アケボノソウも危険だ。競走馬は脚にひどい怪我をしたら生きていけない。生かしても苦しんで死ぬだけだから、最悪予後不良といって安楽死させられる。

「先輩…さくらくんが…アケボノソウが」
「大丈夫、きっと大丈夫だから!ね?」

由良先輩は私を落ち着けるように、抱きしめて背中を撫でてくれる。

「ほら、なにか甘いものでも飲んで落ち着こう?」

由良先輩がくれたミルクティーをひとくち飲んで、ようやく震えが止まった。

「アタシも多少ツテがあるから聞いてみる。大丈夫!桜宮騎手もアケボノソウもきっと無事だよ」
「そうですよね…わ、私が信じなきゃ……」

別れたとは言っても、嫌いになったわけじゃない。さくらくんもアケボノソウもどうか無事で……と祈るような気持ちでフィッターを漁ったりしてみた。

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