極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
ブブブ ブブブ
携帯の着信。

ん?
父さんだ。

うぅーん、このタイミングでの電話は嫌な予感しかしないんだが。

「もしもし」
「ああ、私だ」
「はい」
わかっていますとはさすがに言えない。

「母さんが退院したんだ」

えっ。
「そうですか、それは良かった」

俺にとって継母である母さん。
若くてきれいな人だがあまり体が丈夫ではなくて、よく体調を崩す。その上、精神的にも弱いところがあって、パニックになりやすい傾向もある。
今回も自分の処方薬をまとめて飲んでしまい入院になっていた。

「お前にも心配をかけたから一応連絡だ」
「はい」

退院したとはいえ、しばらくは目が離せないだろう。
妹も結婚して嫁いでしまったからしばらくは父さん1人の負担になりそうだ。
せめて家政婦を家に入れることを納得してくれれば父さんも安心できるんだろうけれど、母さんは他人が家に入ることを嫌がるから。

「父さんは、大丈夫ですか?」

ただでさえ忙しいのに、母さんの世話まで手が回らないだろう。

「まあ何とかするさ」
「来月の終わりには僕も帰りますので」
待っていてください。と言いかけたのに、
「帰ってこれるのか?」
父さんに遮られた。

「えっと・・・それは」
どういう意味ですかと聞こうとして、産科部長の顔が目の前に浮かんだ。
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