極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
私の妊娠が発覚してから、毎日のように店に顔を出すようになった太郎さん。
当然不思議そうな顔をする店の子に、「美貴さんを気遣ってあげてほしい。何かあればすぐに知らせて」とわざわざ言って歩く。
それだけじゃない。
自分の休憩時間は必ず店に来て食事をし、私が食事をしたのを確認する。
そして仕事が終わると私のマンションへ帰ってきて、夕食を用意して私に食べさせる。
忙しいお医者様のどこにそんな時間があるんだろうと思うくらい、いつも私の側にいる。

「ねえ太郎さん、仕事は大丈夫なの?」
こんなにも私のために時間を費やす太郎さんが心配になって聞いても、
「大丈夫だよ」
優しい顔と優しい声。

太郎さんの事だから仕事をおろそかにするとは思わないけれど、私中心の生活になっていることは明らか。
私の方だってこんな生活に慣らされたら元には戻れなくなることががわかっていて、それでも文句も言わずに太郎さんに従っている。
そこには理由があって・・・この関係が終わりの見えたものだから。
あとひと月も経たないうちに、太郎さんは地元に帰ってしまう。
それは決定事項だった。
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