極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「あんたって本当に屈折しているのね」
同情するような泉美の眼差し。

「そうね、かわいくないってよく言われる」
「確かに」

よく考えてみれば、こんな女に「好きです」なんて言ってくれる太郎さんは奇特な人だな。
それともよっぽどの変わり者か、マゾヒストだったりして・・・

フフフ。

「何よ、気持ち悪いわね」
「ああ、ごめん」
変な想像しちゃった。

「あんた相手に説教するつもりは無いけれどね、」

泉美にしては真剣な顔で私を見るから、私も少し姿勢を正す。

「うちの子たちって双子じゃない」
「うん」
かわいい男女のミックスツイン。

「おなかの中から常に一緒に生きてきたわけよ」
「でしょうね」
双子なんだから。

「でもね、大地はトマトが大嫌いで、好奇心旺盛ですぐに外へ行きたがるくせに犬や猫を見ると泣き出すの。要は臆病者なのね」
「わかる」
この間未海ちゃんがお熱を出したときだって、泉美の姿が見えなくなったら大泣きだったもの。

「一方未海は、何でもよく食べて好き嫌いもなし。人見知りで知らない人には絶対に近づかないくせに、大きな犬でも平気なのよ。大人しそうに見えるけれど、肝が据わっているのは未海の方だと思う」
「ふーん」
双子でも個性があるのね。

「一緒に生まれ育った双子でもそれぞれ違うの。個々に人格ってものがあるんだから。だからね、子供はあなたの持ち物じゃないのよ」
「わかって・・・る」
泉美に言われなくても、頭では理解している。

「じゃあ彼に、太郎さんにも伝えないと」

なるほど、泉美が言いたいのはそこか。
< 76 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop