極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「美貴さんたらここのところお昼にはトマトとキュウリしか食べてないんですよ」
会話から私と太郎さんが知り合いなんだと理解した沙月ちゃんは、ここぞとばかり太郎さんに告げ口をする。

「それは良くないなあ」

あぁー、やめて。
太郎さんが医者の顔になってるじゃない。

「あのね、朝と夜はちゃんと食べてるの。お昼は軽くした方が体も調子がいいのよ」
これは嘘じゃない。

朝は野菜ジュースだけだけれど、夜にはそうめんや鶏の胸肉も少しずつ食べているし、無理して食べるよりもトマトとキュウリだけにした方が悪阻もきつくない。
これが私のベストなんだから。

「それでも、キュウリとトマトだけってのは感心しない。それにだいぶ痩せたでしょ?」
「ええ、まあ」
痩せたくて痩せたわけじゃないけれど。

「ダメだよ、ちゃんと食べないと」
「ですよね、私もそう言っているんですけれど」
この二人のタッグはとっても私に不利。

「沙月ちゃん、バックに荷物来てたからお店に出してくれる?」
「はぁい」

さすがにいたたまれなくなって、ちょっと強引に用事を頼んでしまった。
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