極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
長いこと実家に帰っていない私のもとに駿が来るようになったのはこの1年ほど。私が店を開いたと書いたSNSを見た駿がいきなりやって来たのがきっかけだった。

正直会いたくないと思ったけれど、お店のお客さんとしてくるからには拒むこともできず、数ヶ月に一度駿が出張で東京に出てくる度に顔を合わせるようになった。

「俺だって、店の中でお前と喧嘩するつもりは無いんだ。事前に連絡をくれれば外で会ってもいいんだぞ」
「それが嫌だから連絡しないのよ」
思わず本音が出てしまう。

さすがにこの年になって、10代の頃の初恋をひきづるつもりは無い。
今更駿に未練がある訳でもない。
あの頃は私も駿も桃花も幼くて、自分のことしか考えられなかっただけ。
私が桃花の立場でも同じことをしたとは思わないけれど、桃花なりに思うところがあっての行動だったんだろうと思う。
それでも、心のわだかまりは消えない。

「お前も頑固だな」
「悪かったわね」

「あの、美貴さん?」

え?
あ、太郎さんが・・・いるのを忘れていた。

「すみませんお騒がせして」
さすがに恥ずかしくなって、太郎さんに頭を下げる。

「いいんですよ。ご友人ですか?」
「えっ」
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