極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「桃花もお母さんも心配しているぞ、一度くらい帰って来い」
「・・・」
絶対に嫌です。

「俺のこと、まだ怒っているのか?」
「はあ?」
客に対する態度でないのはわかっていて、目の前の駿を睨んでしまった。

「もう10年だぞ」
「わかっているわよ」

自分でも意地っ張りだとは思っている。
私だって母さんに会いたくないわけじゃない。
でも、幸せそうな桃花と駿を見たくなくて、帰省を避けていた。

「桃花の奴、ああ見えてお前に会いたがっているんだ」
「嘘よ」

小さい頃は仲が良かった桃花と私。
体が弱くて外遊びもできなかった桃花は、いつも家の中にいた。私はそんな桃花の遊び相手だった。
大きくなるにつれて時間も合わなくなり一緒に遊ぶことも話すことも減っていったけれど、私は桃花のことをずっと気にかけていた。

「美貴が俺に怒るのは仕方がないと思う。俺はお前を傷つけたんだから。でも桃花のことはいい加減許してやれよ。実の妹だろ」
「妹だからでしょ」

私は笑顔一つも見せることなく、注文されたアイスコーヒーを差し出した。
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