迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

常日頃からの行動は(二)


 現実世界で逃げたために夢の中まで追いかけてきたというのなら、逃げるだけでは対処できないことはすぐに分かることだろう。

 頑張って添い寝までしたのは、何も一緒に追いかけっこをして欲しかったからではない。

 一人よりは心強いのは確かだが、解決しなければ意味がないのだ。



「お、それいいな。やってみよう」



 明らかに何か企んでいるような笑みを返したかと思うと、シンはつかんだ私の手を引っ張った。

 体がバランスを崩し、倒れそうになったところを抱き留められる。



「な、なに。どういうこと?」



 わけの分からないまま立ち止まり、シンは私の体をくるりと神隠しの方へ向ける。

 抗議が届くわけもなく、私はこの時初めて自分を追いかけている神隠しの正体を見た。

 大きさはちょうど三歳くらいの女の子だ。

 赤い着物を着て、おかっぱ頭の。どこかで見たことがある。



市松人形(いちまつにんぎょう)……」



 私が声を発すると自分を自覚したことがよほどうれしかったのか、その人形の顔は歪んだ笑みを見せた。

 そして、距離をゆっくり、ゆっくり縮めてくる。

< 30 / 85 >

この作品をシェア

pagetop