迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第七章

常日頃からの行動は(一)


 夢はまたいつものところから始まった。

 動かない足、遠くから風に乗って聞こえる鈴の音。

 しかし今日はいつもよりも意識が鮮明としていて、すぐに意識を足に向ける。

 足に動け、動くはずだと念じれば金縛りが解け走り出せる。



「シン」



 私が声を上げるとほぼ同時に、シンに手を握られる。

 そしてあの日を再現するかのように、私たちは走り出した。



「で、この後どうするの? この前みたいに、バッグの人形を投げつけてここから逃げる?」



 言った後に、自分が今先ほど寝る前と同じ格好をしていて、バッグなど何も持っていないことに気付く。



「やだ、うそ、そういうオチ?」

「つかんでるものを夢に持ってこれただけ、まだ上等だろ」



 確かにシンを自分の夢の中に引き込むことには成功した。

 しかし他に武器になるようなものも、なにも持ってはいないのだ。

 しかもいくら夢の中では疲れないとはいえ、明らかに後ろから追いかけて来る鈴の音が速い。

 よほど捕まえる直前の獲物が、目の前でうまく逃げていくことが腹立たしいのだろう。

 かといって、私も捕まる気などない。



「いくら現実と違って疲れないとは言っても、まさかこのまま朝まで走り続けるわけじゃないでしょうね」

「ん-、まあそれも悪くない案だな」

「どこが悪くないのよ。結局前回逃げたから、こんなことになってるんでしょ。もっとこう、建設的なものはないの? ほら、吹き飛ばすとか、燃やすとか」
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