迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

常日頃からの行動は(五)


「攫われた子さ。そしてあの中から逃れるために、鬼ごっこのように次を探すのさ」

「じゃあ、今の子は……」

「外見の怪異を千夏が剥がしたから、俺の炎が中までちゃんと入ったんだ。あの魂は、このまま空へ上がることができる」



 空へ上がる。

 それは救いなのかは、私には分からない。

 でも少なくとも、あそこに囚われているよりはマシなはずだ。

 もう怪異の中で誰かを追いかけることをしなくてもいいのだから。



「……やっぱ、胸ないな」



 どうしてこの場面で、胸の話が出来るのだろうか。

 私を抱きしめた腕は確かに胸に当たっており、そのまま手のひらは胸そのものをつかんでいる。



「変態」



 私は思いきり、シンの足を踏みつけた。



「いってー。だから、不可抗力だろう」

「胸揉むやつのどこが不可抗力なのか、教えて欲しいわ」

「たまたまだ、たまたま。それに俺はBカップ以上にしか興味が」



 言い終わる前に、私はくるりとシンの方へ向き直り、そのまま蹴り上げる。



「ぐはっ」



 急所にクリーンヒットし、蹴り上げた個所を押さえてシンは地面へとうずくまった。

 さすがにこれは、自業自得だろう。

 シンなりの励ましだったのかもしれないが、全てにおいて失礼すぎる。



「私、Bカップだし」

「……」



 私は痛みで動けないシンを無視し、あてもなく歩き始めた。

 どうせ夢なのだから、そのうち覚めるだろう。
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