迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

道祖神(二)


「そうかい」



 しかしそれだけ言うと再び前を向き、怪異はただじっと景色を眺めていた。

 ぼーっと、ただ何をするわけでもないその姿に肩の力が抜ける。

 そしてどうしても見ている景色が気になり、隣に並んで同じ方向を眺めた。

 ここからは、かすかに先の横断歩道が見える。



「横断歩道見てるんですか?」

「おまえさん、まだいたんかね。そうさ、道祖神だからね。道の安全を見守る以外になにをすることがある」

「遠くないですか?」

「ん……まあ、遠いさね。だから、どうにもならんことが多い」



 その口ぶりは本当に残念そうだった。

 道祖神は元来、道の境や峠などに置かれ、災いを避けたり疫病と安全の守り神だ。



「道祖神だから、神様ってことなんですよね」

「……神か怪異か妖怪かなんぞ、人間が付けた名前にすぎんさ。皆、元は同じだね。後からその役割として、名を縛ったようなもんだよ」



 まただ。

 ここでも名を縛るという言葉が出てきた。

 でもこれは、なんとなく分かる。同じ怪異だったものたちを神や怪異や妖怪などと括り付ているだけなのだろう。

 人はその職業によっての名があるように。



「神や神獣になれたモノたちと、怪異や妖怪と呼ばれたモノの違いはあるんですか?」



 私が質問をすると、道祖神はやや驚いたように目を見開いた。

< 41 / 85 >

この作品をシェア

pagetop