迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第九章

閑話 道祖神(一)


 田舎の道はやたら広い。

 整備されている道もあれば、一本裏に入ると道は一変する。

 あぜ道や獣道と言ってもいいぐらいの、舗装されていない土の道だ。

 人が一人通れるくらいの幅だけ、草がなくなっている。



 山へと向かう道の手前に、苔むす岩にお地蔵様のようなものが彫られた道祖神どうそじんが置かれていた。

 参る人もいないのか、お供え物もなく、ただひっそりと佇んでいる。



「苔、ひどすぎ。これじゃあ、顔も見えないし。んと、これは男なの、女なの?」



 私は初めて見る道祖神にやや興奮しつつ、しゃがみ込む。



「神なんだから、男とか女とかそんな概念があるわけないだろう」

「わっ」



 急に声をかけられ、思わす尻もちをついた。

 見れば声をかけてきたのは、道祖神の隣にちょこんと座る同じようなサイズの怪異だった。

 お地蔵様に近いサイズのその怪異は、確かにおじいちゃんともおばちゃんとも見てとれる。



「……なんだ、お前さん見えるのかい」

「……見えるみたいですね」



 怪異を見るのは初めてではないとはいえ、神隠しに追いかけられたばかりだ。

 見た目こそ穏やかでも、内面までは分かりはしない。
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