迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

本能での拒絶(二)


 先ほどの私が出席した本家の集まりには、父は来ていなかった。

 しかし祖母の言う通りだとすると、集まりの後で本家に呼ばれたということか。

 最近、あまり父と顔を合わせていない。

 父はいつも縁側から外を眺めるか、どこかへ出かけることが増えてしまった。

 部屋へ行ってもいないことが多く、祖母いわく遅くに帰ってきているようだ。

 もっとも顔を合せたところで父との会話があるわけでもないのだから、気にすることもないのだろう。



「千夏、本家はどうだったんだい?」

「長が、私か従兄の戒を次期長に指名することにしたって」

「そうかい、そうかい。それは良かった」

「ねえ、おばあちゃん……。ううん、なんでもない」



 喜んでいる祖母に、水を差すことはどうしても出来なかった。

 長になんてなりたくない。

 そう言い切ってしまうのは簡単だけど、この場で言うようなことではない気がしてそれ以上なにもいうことは出来なかった。



「今日、夕飯何だった? 足りないものあるなら、私買いに行ってくるけど」

「そうかい……。それなら、お醤油が足りなくなってきたから、行ってきてくれるかい?」

「もちろん」



 家から出られると思うだけで、ほっとしている自分がいた。



「……なんだそれ」



 誰も答えることのない言葉を、一人吐き捨てた。
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