迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第十一章

動かない自転車(一)


 家から商店街へ向かうのは坂道を下るだけなので、さほど苦にはならなかった。

 どこもかしこも坂道しかなく平坦な道のほぼないこの町では、歩くかバスに乗るか自家用車を出すかという移動手段しかない。

 しかしバスは一時間に一本しかないため、歩いてしまった方が早いのではないかと思えてしまう。



「お嬢さん、大当たりだよ。ほら、特賞の自転車」



 商店街で醬油を購入した後、一枚の福引券をもらった。

 どうせティッシュしか当たらないだろうとは思いつつも、今日までだと勧められて引いたのがこれだ。



「……自転車……」



 これはどこで使う物だろうか。

 前に住んでいたところでなら、活用方法はいくらでもあるだろう。

 しかしこの町で自転車に乗っている人など見かけたこともない。

 しかも問題はそれだけではなく、当たった自転車は後ろに子どもを乗せるところが付いたいわゆるママチャリだ。



「え、これって」



 この歳でこれを乗るというのは、さすがに恥ずかしい。

 そうだ。

 これは誰かに譲ろう。

 そう思い、福引に参加していた人たちを見回す。

 しかしいるのはどう見ても、祖母に近い年齢の自転車には乗らないような方たちしかいない。
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