迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

地に残る未練(二)


「一言多い」

「せっかく助けてやったのに、それはないだろう」

「せっかく格好よく助けてくれたのに、台無しです」

「あ、いや……それは悪かった」

「分かればよろしい」

「以後気をつけます? あん? なんかおかしくないか、これ」



 それでも素直に謝ってくれたシンに、思わず私は吹き出す。

 シンもやや膨れながらも、つられて笑い出した。



「なんで自転車が動かなかったの?」

「んなもん、余計なものを拾ってくるからだろ」



 シンの言う、余計なものとはなんのことだろうか。

 私が自転車を見渡しても、特に異常は見当たらない。



「なんにも、ないみたいだけど」

「はぁ。これだから無自覚のやつは困る」



 シンはやれやれと言わんばかりだ。

 そんなことを言われても、元からなんの力もないのだから。

 そう考えて、一度止まる。

 それでも長は私には力があると言っていた。

 もし自分の中で、それを見ないようにしているとしたら。

 自分の強い意思ならば、逆も出来るのかもしれないと。



「無自覚なのかな。でも、無自覚ってことは自覚さえすれば、どうにかなるの?」

「それは、俺が出す答えではないだろ」



 そうだ。

 そんなところまで、シンを頼るわけにはいかない。

 これは自分自身のことなのだから。
< 52 / 85 >

この作品をシェア

pagetop